確認申請図書は確認検査機関で開示できるのか
建築物について、過去にどのような確認申請が行われていたのか、当時の審査でどのような判断がされたのか、また、確認申請書類を閲覧できないかという問い合わせが、民間の指定確認検査機関に寄せられることがあります。
例えば、建物の売買、改修工事、用途変更、遵法性調査などの場面では、過去の確認申請図書や検査済証の内容を確認したいというニーズがあります。
しかし、民間の指定確認検査機関は、原則として、確認申請図書や物件に関する情報を第三者へ開示することはできません。
その理由は、建築基準法第77条の25において、指定確認検査機関やその職員に対して、確認検査業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないという秘密保持義務が定められているためです。
(秘密保持義務等)
第77条の25 指定確認検査機関(その者が法人である場合にあつては、その役員。次項において同じ。)及びその職員(確認検査員又は副確認検査員を含む。同項において同じ。)並びにこれらの者であつた者は、確認検査の業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。出典:建築基準法 | e-Gov 法令検索
※読みやすいように一部表記を整理しています。
つまり、確認検査機関は、確認申請や検査の業務を通じて知った情報について、守秘義務を負っています。
そのため、問い合わせがあっても、確認検査機関が自由に過去の確認申請図書を開示したり、当時の審査内容を説明したりすることは原則できません。
情報公開制度は特定行政庁の制度
一方で、建築基準法には、一定の書類について閲覧できる制度が設けられています。
それが、建築基準法第93条の2に定められている書類の閲覧制度です。
この制度では、特定行政庁が保有する一定の書類について、閲覧の請求があった場合には、閲覧させなければならないとされています。
(書類の閲覧)
第93条の2 特定行政庁は、確認その他の建築基準法令の規定による処分並びに第12条第1項及び第3項の規定による報告に関する書類のうち、当該処分若しくは報告に係る建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして国土交通省令で定めるものについては、国土交通省令で定めるところにより、閲覧の請求があつた場合には、これを閲覧させなければならない。出典:建築基準法 | e-Gov 法令検索
※読みやすいように一部表記を整理しています。
ここで重要なのは、書類の閲覧制度は、確認検査機関の業務ではなく、特定行政庁の義務として定められているという点です。
そのため、過去の確認申請に関する書類を閲覧したい場合は、確認検査機関ではなく、建築物の所在地を管轄する特定行政庁に確認する必要があります。
閲覧対象となる書類
閲覧できる書類は、建築基準法施行規則第11条の3に定められています。
閲覧対象となる主な書類は、以下のとおりです。
| 閲覧対象書類 | 内容 |
|---|---|
| 建築計画概要書 | 建築物の概要、建築主、設計者、敷地、用途、規模などを記載した書類 |
| 築造計画概要書 | 工作物等の築造計画に関する概要書 |
| 定期調査報告概要書 | 建築物の定期調査報告の概要 |
| 定期検査報告概要書 | 建築設備、昇降機、防火設備等の定期検査報告の概要 |
| 処分等概要書 | 確認、検査済証、命令、許可等の処分に関する概要 |
| 全体計画概要書 | 全体計画認定に関する概要書 |
| 指定道路図 | 建築基準法上の指定道路の位置を示す図面 |
| 指定道路調書 | 指定道路の種別、幅員、指定年月日等を記載した調書 |
このように、閲覧制度で確認できるのは、あくまで概要書や指定道路関係の書類など、法令で閲覧対象とされた書類です。
確認申請時に提出された設計図書一式、構造計算書、設備図、審査機関との質疑回答書、補正資料などがすべて閲覧できるわけではありません。
建築計画概要書で確認できること
閲覧制度でよく利用される書類が、建築計画概要書です。
建築計画概要書には、建築物の計画概要が記載されています。
一般的には、次のような情報を確認できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建築主 | 申請時の建築主の情報 |
| 設計者 | 設計者又は設計事務所の情報 |
| 敷地情報 | 所在地、敷地面積、用途地域等 |
| 建築物の用途 | 住宅、共同住宅、事務所、店舗など |
| 建築物の規模 | 建築面積、延べ面積、階数、高さなど |
| 構造 | 木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など |
| 確認済証番号 | 確認済証の交付年月日や番号 |
| 検査済証番号 | 検査済証がある場合の交付年月日や番号 |
ただし、建築計画概要書は、あくまで概要を確認するための書類です。
そのため、詳細な平面図、断面図、構造図、設備図、法規チェックの内容、審査時の具体的な指摘事項までは確認できません。
実際の確認方法
過去の建築確認に関する情報を調べたい場合は、次のような流れで確認するとよいです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 建物所在地を確認する | まず、建物の所在地を正確に確認する |
| 管轄の特定行政庁を確認する | 市区町村又は都道府県の建築指導担当部署を確認する |
| 閲覧対象書類を確認する | 建築計画概要書、処分等概要書、指定道路図等の閲覧可否を確認する |
| 閲覧請求を行う | 窓口、郵送、オンライン等、自治体の方法に従う |
| 必要に応じて写しの交付を確認する | 閲覧のみか、写しの交付が可能かを確認する |
自治体によって、閲覧方法、手数料、写しの交付可否、オンライン対応の有無が異なります。
そのため、実際に確認する場合は、管轄の特定行政庁のホームページや窓口で、最新の手続きを確認する必要があります。
まとめ
確認申請図書や過去の審査内容について、確認検査機関に開示を求める問い合わせが行われることがあります。
しかし、民間の指定確認検査機関には、建築基準法第77条の25に基づく秘密保持義務があるため、確認検査業務に関して知り得た秘密を第三者へ開示することはできません。
一方で、建築基準法第93条の2では、一定の書類について、特定行政庁が閲覧に供する制度が定められています。
閲覧対象となる主な書類は、建築計画概要書、築造計画概要書、定期調査報告概要書、定期検査報告概要書、処分等概要書、全体計画概要書、指定道路図、指定道路調書などです。
過去の建築確認に関する情報を確認したい場合は、確認検査機関ではなく、まずは建物所在地を管轄する特定行政庁に相談し、閲覧可能な書類の範囲を確認しましょう。