建築 建築基準法(意匠)

避難階段とは

・どんな建物に必要?
・基準は?
・どんな取り扱いがある?

元確認検査員の一級建築士が解説します。

避難階段とは

避難階段とは、建築基準法施行令第122条等に規定される階段で、文字どおり避難のために設けられる階段です。
建築物の規模によっては設置が必要となり、直通階段をさらに強化したような位置づけの階段です。

直通階段については、以下の記事が参考になります。

避難階段の設置が必要な建築物

避難階段の設置が必要な建築物は、施行令第122条に規定されています。
以下、条文を記載します。

建築基準法施行令第122条
建築物の5階以上の階(主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物で五階以上の階の床面積の合計が100㎡以下である場合を除く。)又は地下2階以下の階(主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物で地下2階以下の階の床面積の合計が100㎡以下である場合を除く。)に通ずる直通階段は次条の規定による避難階段又は特別避難階段とし、建築物の15階以上の階又は地下3階以下の階に通ずる直通階段は同条第3項の規定による特別避難階段としなければならない。ただし、特定主要構造部が耐火構造である建築物(階段室の部分、昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)及び廊下その他の避難の用に供する部分で耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたものを除く。)で床面積の合計100㎡(共同住宅の住戸にあつては、200㎡)以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(直接外気に開放されている階段室に面する換気のための窓で開口面積が0.2㎡以下のものに設けられる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備を含む。)で区画されている場合においては、この限りでない。
2 3階以上の階を物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物にあつては、各階の売場及び屋上広場に通ずる2以上の直通階段を設け、これを次条の規定による避難階段又は特別避難階段としなければならない。
3 前項の直通階段で、5階以上の売場に通ずるものはその1以上を、15階以上の売場に通ずるものはその全てを次条第3項の規定による特別避難階段としなければならない。

要約すると以下のようになります。

避難階段の設置が必要となる建築物

対象原則例外
5階以上の階に通じる直通階段避難階段または特別避難階段が必要①主要構造部が準耐火構造で、5階以上の階の床面積の合計が100㎡以下の場合 ②主要構造部が不燃材料で造られており、5階以上の階の床面積の合計が100㎡以下の場合 ③特定主要構造部が耐火構造で、100㎡以内ごと(共同住宅の住戸は200㎡以内ごと)に耐火構造の床・壁または特定防火設備で区画されている場合
地下2階以下の階に通じる直通階段避難階段または特別避難階段が必要①主要構造部が準耐火構造で、地下2階以下の階の床面積の合計が100㎡以下の場合 ②主要構造部が不燃材料で造られており、地下2階以下の階の床面積の合計が100㎡以下の場合 ③特定主要構造部が耐火構造で、100㎡以内ごと(共同住宅の住戸は200㎡以内ごと)に耐火構造の床・壁または特定防火設備で区画されている場合
15階以上の階に通じる直通階段特別避難階段が必要なし
地下3階以下の階に通じる直通階段特別避難階段が必要なし

物販店舗における特例

対象必要な階段
3階以上の階を物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物各階の売場および屋上広場に通じる2以上の直通階段を設け、避難階段または特別避難階段とする必要がある
5階以上の売場に通じる直通階段そのうち1以上を特別避難階段とする必要がある
15階以上の売場に通じる直通階段すべて特別避難階段とする必要がある

補足

上記の例外のうち、100㎡以内ごとに区画されている場合とは、建築物の特定主要構造部が耐火構造であり、耐火構造の床・壁または特定防火設備によって、防火上有効に区画されている場合をいいます。
この区画は、階段室や昇降機の昇降路、避難用廊下などの部分を除いて判断します。

避難階段の構造

避難階段として求められる構造は、施行令第123条に規定されています。
以下、条文です。

建築基準法施行令第123条
屋内に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段室は、第四号の開口部、第五号の窓又は第六号の出入口の部分を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
二 階段室の天井(天井のない場合にあつては、屋根。第3項第四号において同じ。)及び壁の室内に面する部分は、国土交通大臣が定める基準に従い、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ることその他これに準ずる措置を講ずること。
三 階段室には、窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
四 階段室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々1㎡以内で、法第2条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)は、階段室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室以外の当該建築物の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く。)から90㎝以上の距離に設けること。ただし、第112条第16項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
五 階段室の屋内に面する壁に窓を設ける場合においては、その面積は、各々1㎡以内とし、かつ、法第2条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものを設けること。
六 階段に通ずる出入口には、法第2条第九号の二ロに規定する防火設備で第112条第19項第二号に規定する構造であるものを設けること。この場合において、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する戸又は戸の部分は、避難の方向に開くことができるものとすること。
七 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
2 屋外に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段は、その階段に通ずる出入口以外の開口部(開口面積が各々1㎡以内で、法第2条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)から2m以上の距離に設けること。
二 屋内から階段に通ずる出入口には、前項第六号の防火設備を設けること。
三 階段は、耐火構造とし、地上まで直通すること。

要約すると以下のようになります。

1.屋内に設ける避難階段

屋内避難階段は、次のような構造とする必要があります。

  • 階段室は、原則として耐火構造の壁で囲う必要があります。
    ただし、開口部、窓、出入口の部分については除かれます。
  • 階段室の天井は、不燃材料による仕上げなどが必要です。
    なお、天井がない場合は屋根が対象となります。
    また、壁の室内側についても、不燃材料で仕上げ、その下地も不燃材料とするなど、これに準ずる措置が必要です。
  • 階段室には、採光に有効な窓などの開口部、または予備電源を有する照明設備を設ける必要があります。
  • 階段室の屋外に面する壁に設ける開口部は、原則として、階段室以外の部分に設けられた開口部や、階段室以外の壁・屋根(耐火構造のものを除く。)から90cm以上離して設ける必要があります。
    ただし、開口面積がそれぞれ1㎡以内で、かつ防火設備付きのはめごろし戸が設けられている開口部は、この制限の対象外です。
    また、これとは別に、外壁のうち防火区画等に接する部分を含む幅90cm以上の部分が準耐火構造とされており、又は外壁面から50cm以上突出した準耐火構造のひさし・床・袖壁等によって防火上有効に遮られている場合にも、この制限の対象外となります。
  • 階段室の屋内に面する壁に窓を設ける場合は、
    各々の面積を1㎡以内とし、かつ、防火設備付きのはめごろし戸を設ける必要があります。
  • 階段に通じる出入口には、防火設備を設ける必要があります。
    この防火設備のうち、直接手で開くことができ、かつ自動的に閉鎖する戸または戸の部分については、避難方向に開くことができる構造でなければなりません。
  • 階段自体は耐火構造とし、避難階まで直通していなければなりません。

2.屋外に設ける避難階段

屋外避難階段は、次のような構造とする必要があります。

階段自体は耐火構造とし、地上まで直通していなければなりません。

階段は、その階段に通じる出入口以外の開口部から、2m以上離して設ける必要があります。
ただし、開口面積がそれぞれ1㎡以内で、かつ、防火設備付きのはめごろし戸が設けられている開口部については、この距離制限の対象外です。

屋内から階段に通じる出入口には、屋内避難階段と同様に、防火設備を設ける必要があります。

物販店舗における避難階段等の規定

物品販売業を営む店舗(床面積1500㎡超の場合)では、避難階段や特別避難階段を設けるだけでなく、その幅そこに通じる出入口の幅等についても基準が定められています。施行令第124条、125条に規定されています。
※3階以上に物販店舗が無い場合は、避難階段や特別避難階段の設置は不要です(施行令第122条第2項)。
以下、条文です。

建築基準法施行令第124条
物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物における避難階段、特別避難階段及びこれらに通ずる出入口の幅は、次の各号に定めるところによらなければならない。
一 各階における避難階段及び特別避難階段の幅の合計は、その直上階以上の階(地階にあつては、当該階以下の階)のうち床面積が最大の階における床面積100㎡につき60㎝の割合で計算した数値以上とすること。
二 各階における避難階段及び特別避難階段に通ずる出入口の幅の合計は、各階ごとにその階の床面積100㎡につき、地上階にあつては27㎝、地階にあつては36㎝の割合で計算した数値以上とすること。
2 前項に規定する所要幅の計算に関しては、もつぱら1若しくは2の地上階から避難階若しくは地上に通ずる避難階段及び特別避難階段又はこれらに通ずる出入口については、その幅が1.5倍あるものとみなすことができる。
3 前2項の規定の適用に関しては、屋上広場は、階とみなす。

建築基準法施行令第125条第3項
物品販売業を営む店舗の避難階に設ける屋外への出口の幅の合計は、床面積が最大の階における床面積100㎡につき60㎝の割合で計算した数値以上としなければならない。

要約すると以下のようになります。

1. 避難階段・特別避難階段の幅

各階に設ける避難階段・特別避難階段の幅の合計は、
その階より上の階(地下階の場合はその階以下の階)のうち、最も床面積が大きい階を基準として、
床面積100㎡につき60cm以上必要です。

2. 階段に通じる出入口の幅

各階における避難階段・特別避難階段に通じる出入口の幅の合計は、各階ごとに、

  • 地上階では床面積100㎡につき27cm以上
  • 地下階では床面積100㎡につき36cm以上
    必要です。

例えば、床面積300㎡の地上階であれば、300÷100×27=81cm、地下階であれば、300÷100×36=108cmとなります。

3. 幅を1.5倍としてみなせる場合

もっぱら1若しくは2の地上階から避難階または地上へ通じる階段や、その出入口については、
実際の幅を1.5倍あるものとして計算することができます。

4. 屋上広場の扱い

これらの規定を適用する際は、屋上広場も1つの階として扱います。

5. 屋外への出口

物品販売業を営む店舗においては、避難階に設ける屋外への出口の幅の合計を、床面積が最も大きい階の床面積100㎡につき60cmの割合で計算した数値以上としなければなりません。

例えば、建物の中で最も床面積が大きい階が500㎡であれば、必要な出口幅の合計は次のように計算します。

500㎡ ÷ 100㎡ × 60cm = 300cm

この場合、避難階に設ける屋外への出口の幅の合計は、3.0m以上必要となります。

屋外への出口等の施錠装置の構造等

屋外への出口等の扉について、施行令第125条の2において規定されています。
以下条文です。

建築基準法施行令第125条の2第1項
次の各号に掲げる出口に設ける戸の施錠装置は、当該建築物が法令の規定により人を拘禁する目的に供せられるものである場合を除き、屋内からかぎを用いることなく解錠できるものとし、かつ、当該戸の近くの見やすい場所にその解錠方法を表示しなければならない。
一 屋外に設ける避難階段に屋内から通ずる出口
二 避難階段から屋外に通ずる出口
三 前二号に掲げる出口以外の出口のうち、維持管理上常時鎖錠状態にある出口で、火災その他の非常の場合に避難の用に供すべきもの

要約すると以下のようになります。

避難のために使用する一定の出口に設ける戸の鍵は、屋内から鍵を使わずに解錠できる構造としなければなりません。
また、戸の近くの見やすい場所に、解錠方法を表示する必要があります。

対象となるのは、次のような出口です。

  • 屋内から屋外避難階段に通じる出口
  • 避難階段から屋外に通じる出口
  • そのほか、普段は施錠されていても、火災など非常時には避難に使用する出口

ただし、法令により人を拘禁する目的で使用される建築物については、この限りではありません。

その他取扱い等

屋外避難階段から2m以内の開口部についての取扱い

屋外避難階段では、火災時の安全確保のため、階段の近くに設ける開口部に制限があります。
原則として、階段から2m以内の範囲には開口部を設けることができません
ただし、開口面積が1㎡以内で、網入りのFIX窓であるものは例外として扱われます。

この2mの距離は、階段の床面を基準に測定します。
たとえば、腰壁と床が耐火構造のRC造である場合は、以下の図のように測定することができます。
赤色部分は、開口部を設けることができない範囲です。

また、屋外避難階段から2m以内の範囲には、屋内で火災が発生した際に火炎や煙が噴出し、避難の妨げとなるおそれがあるため、換気設備等の開口部を設けることもできません。

ただし、以下の図のように、換気・空調ダクトがこの2m以内の範囲を貫通する場合であっても、

  • ダクトを板厚0.8mm以上の鉄板製(以下の図の赤色部分)とし、
  • 吹出口等を屋外避難階段から2m以上離れた位置に設ける

ことで、設置が認められます。


屋外避難階段の直上・直下にある開口部の取扱い

屋外避難階段から2m以上離れている場合は、基準上、開口部を設けることが可能です。
ただし、火災時には当該開口部から煙や火炎が噴出し、避難の妨げとなるおそれがあるため、設置は望ましくないとされています。

詳細は、以下の図をご参照ください。

まとめ

上記以外にも、避難階段に関する取扱いは多く存在しているので、より詳細については、以下の書籍を確認しましょう。
お読みいただき、ありがとうございました。

  • この記事を書いた人

TAK

新卒で確認検査機関に入社し、意匠・構造の双方の確認審査業務を経験した元確認検査員。 建築基準法をはじめ、建築物に関するお役立ち情報を発信します。 【保有資格】 一級建築士/一級建築基準適合判定資格者/特定建築基準適合判定資格者(ルート2主事)/ 宅地建物取引士/住宅性能評価員/省エネ適合性判定員 ほか

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