・建築基準法上の取り扱いはある?
・建築できる用途地域は?
・建築基準法以外の注意点は?
一級建築士が解説します。
SOHOとは
SOHOとは、Small Office / Home Officeの略で、小規模な事務所や自宅兼事務所のことをいいます。
近年は、リモートワークや個人事業、副業、フリーランスの増加により、住まいの一部を仕事場として利用するケースが増えています。
一方で、建築や不動産の実務では、SOHOという言葉が使われていても、
「住宅なのか」
「事務所なのか」
「用途変更が必要なのか」
「管理規約上問題ないのか」
といった点を整理する必要があります。
SOHOの具体例としては、次のようなものがあります。
- 自宅マンションの一室でデザイン業務を行う
- 自宅でライター・編集・Web制作を行う
- 個人事業主が住居兼事務所として利用する
- 小規模な法人がマンションの一室を事務所として使う
- 来客の少ないコンサルタント業務を自宅で行う
ポイントは、
住宅としての利用を基本としつつ、一部を仕事場として使う
という点です。
ただし、同じSOHOでも、実際の使い方によっては「住宅」と整理できる場合もあれば、「事務所」と整理すべき場合もあります。
SOHOと事務所の違い
SOHOと一般的な事務所の違いは、主に次の点です。
| 項目 | SOHO | 一般的な事務所 |
|---|---|---|
| 利用形態 | 住宅兼仕事場 | 事務所専用 |
| 利用者 | 個人・少人数 | 従業員・来客が多い |
| 来客 | 少ない | 多い |
| 看板 | 出さない、または小規模 | 表示することが多い |
| 生活利用 | あり | 原則なし |
| 建築上の整理 | 住宅扱いとなる場合もある | 事務所扱いとなる |
SOHOは、あくまで実態に応じて判断されます。
たとえば、
パソコン作業中心で、来客も看板もなく、住宅としての利用が主である場合
には、住宅の一部利用と考えやすいです。
一方で、
従業員が出入りする、来客が多い、看板を出す、住居として使っていない
といった場合は、実質的に事務所として扱われる可能性があります。
建築基準法上の用途はどう考える?
SOHOを考えるうえで重要なのが、建築基準法上の「用途」です。
建築基準法では、建築物の用途に応じて、必要な規制が変わります。
例えば、住宅と事務所では、次のような点で扱いが異なります。
- 用途地域による建築制限
- 避難関係の規定
- 採光・換気などの規定
- 防火・内装制限
- 駐車場附置義務
- 条例上の規制
- 用途変更の要否
SOHOという名称自体は、建築基準法上の明確な用途区分ではありません。
そのため、実務上は、
実際の利用形態を踏まえて、住宅なのか、事務所なのか、または住宅兼事務所なのかを整理する
必要があります。
「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」という本において、SOHOの建築基準法上の取り扱いについて以下のように言及されています。
・形態上、トイレ、流し台(台所)、浴室のいわゆる住宅要件の「3点セット」を備えている場合は、「共同住宅」と判断し、それ以外は事務所と判断する。
ただし、住宅部分と事務所(非住宅)部分の空間ボリュームなどの形態や、主たる用途が何かなどの機能に着目し、実態に応じて住宅か事務所のいずれに該当するかを判断するとしています。
指定確認検査機関や特定行政庁もこの本の取り扱いに準じていることがほとんどなので、必携図書です。
用途地域上はどのように考えるか?
SOHOを計画する場合、用途地域上は、当該利用が「住宅」なのか、「事務所兼用住宅」なのか、「事務所」なのかを整理する必要があります。
SOHOという名称だけで用途が決まるわけではありません。
実際には、建物の使われ方、住宅部分と事務所部分の割合、来客の有無、事務所としての独立性などを個別に確認し、具体的な用途を判断することになります。
つまり、同じ「SOHO」と呼ばれる利用形態であっても、実態によっては、
- 住宅
- 兼用住宅
- 事務所
など、異なる用途として整理される可能性があります。
特に用途地域の規制では、建築できる用途が地域ごとに制限されているため、SOHO利用を行う場合には、どの用途に該当するのかを明確にしておくことが重要です。
兼用住宅の考え方については、以下の記事でご紹介しています。あわせてご確認ください。
事務所兼用住宅として扱う場合の注意点
SOHOが事務所兼用住宅として判断される場合、用途地域によっては、建築できる規模に制限があります。
特に、次の用途地域では、事務所兼用住宅とするために、原則として以下の条件を満たす必要があります。
延べ面積の2分の1以上を住宅の用途に供すること
事務所部分の床面積の合計が50㎡以下であること
対象となる主な用途地域は、以下のとおりです。
| 用途地域 | 事務所兼用住宅の主な条件 |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 延べ面積の1/2以上が住宅用途、かつ事務所部分50㎡以下 |
| 第二種低層住居専用地域 | 延べ面積の1/2以上が住宅用途、かつ事務所部分50㎡以下 |
| 第一種中高層住居専用地域 | 延べ面積の1/2以上が住宅用途、かつ事務所部分50㎡以下 |
| 第二種中高層住居専用地域 | 3階以上に設ける場合、延べ面積の1/2以上が住宅用途、かつ事務所部分50㎡以下 |
| 田園住居地域 | 延べ面積の1/2以上が住宅用途、かつ事務所部分50㎡以下 |
これらの用途地域では、住宅地としての環境を保護する観点から、事務所部分が大きくなりすぎないよう制限されています。
そのため、SOHO利用を前提とする場合でも、事務所部分の面積が50㎡を超える場合や、住宅部分より事務所部分が大きい場合には、兼用住宅として扱うことが難しくなる可能性があります。
住宅なのか、事務所なのかは実態で判断する
SOHOの用途判断では、名称ではなく実態が重要です。
たとえば、住宅の一室でパソコン作業を行う程度で、来客も少なく、住宅としての利用が主である場合は、住宅または住宅の一部利用として整理される可能性があります。
一方で、次のような場合は、事務所として扱われる可能性があります。
- 居住実態がない
- 事務所部分の面積が大きい
- 従業員が常時勤務する
- 来客が多い
- 看板を設置する
- 法人の事務所として専用利用する
- 住宅3点セット(トイレ、流し台、浴室)がない
このような場合は、SOHOという名称であっても、用途地域上は事務所として整理される可能性があります。
また、基準総則においても、SOHOについては、住宅部分と事務所部分の空間ボリュームや形態、主たる用途などに着目し、実態に応じて「住宅」「共同住宅」「事務所」のいずれに該当するかを判断する考え方が示されています。
特定行政庁への確認が重要
SOHOの用途判断は、実際の利用形態によって異なります。
また、同じような計画であっても、建設地を管轄する特定行政庁によって判断や運用が異なる場合があります。
そのため、SOHOを計画する場合は、計画初期の段階で、
- 建物の用途
- 住宅部分と事務所部分の面積
- 利用者の人数
- 来客の有無
- 看板設置の有無
- 住宅としての利用実態
- 用途地域上の制限
などを整理したうえで、建築指導課等と事前に協議しておくことが望ましいです。
特に、低層住居専用地域や中高層住居専用地域、田園住居地域など、住宅系用途地域でSOHO利用を検討する場合は、事務所兼用住宅として成立するかどうかを慎重に確認する必要があります。
賃貸物件でSOHO利用する場合の注意点
建築基準法以外にも、以下のような契約や管理規約等において注意点があります。
マンションの管理規約では、住戸の用途について、
「専ら住宅として使用すること」
と定められていることがあります。
この場合、事務所利用が禁止されている可能性があります。
ただし、実際は次のような軽微な利用であれば問題になりにくい場合もあります。
- 自宅でパソコン作業をする
- 郵便物の受け取り程度
- 来客がほとんどない
- 表札や看板を出さない
- 他の居住者に迷惑をかけない
一方で、次のような利用はトラブルになりやすいです。
- 来客が多い
- 共用部に人の出入りが増える
- 郵便受けや玄関に会社名を大きく表示する
- 騒音・臭気・荷物の搬出入がある
- 従業員が出入りする
- 不特定多数を対象とする営業を行う
SOHO利用可能とされているマンションでも、
どこまでの業務利用が認められるか
は、管理規約や賃貸借契約で確認する必要があります。
まとめ
・計画時には、住宅部分と事務所部分の面積、利用人数、来客の有無、看板設置の有無などを整理し、建築指導課等と事前に協議することが望ましい。
・SOHOとは、Small Office / Home Officeの略で、自宅や小規模な空間を仕事場として利用する形態をいう。
・SOHOは建築基準法上の明確な用途名称ではなく、実際の使われ方に応じて用途を判断する必要がある。
・用途判断では、住宅部分と事務所部分の面積・空間構成・主たる用途・利用実態などを確認する。
・用途地域上は、SOHOが「住宅」なのか「事務所兼用住宅」なのか「事務所」なのかを明確にすることが重要。
・事務所兼用住宅として扱う場合、用途地域によっては、延べ面積の2分の1以上を住宅用途とし、事務所部分の床面積を50㎡以下とする必要がある。
・居住実態がない場合や、事務所部分が大きい場合、従業員・来客の出入りが多い場合などは、事務所として扱われる可能性がある。
・マンションや賃貸物件でSOHO利用する場合は、建築基準法だけでなく、管理規約や賃貸借契約の確認も必要。
・SOHOの判断は、建設地の特定行政庁によって考え方が異なる場合がある。
