・床面積に算入される場合は?
・構造上危険なピロティとは?
一級建築基準適合判定資格者/一級建築士が解説します。
ピロティとは
建物の1階部分で、柱だけが立っていて壁のない開放的な空間を見かけることがあります。このような空間を「ピロティ」といいます。

床面積について
建築基準法上、ピロティ部分は、十分に外気に開放されており、かつ、屋内的用途に供しない場合に限り、床面積に算入しない取扱いとされています。
まず、床面積の算定の基本について、建築基準法施行令第2条では、
「建築物の各階又はその一部で、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による」
と規定されています。
つまり、床面積とは、基本的に建築物によって区画された内部空間の面積を指します。
もっとも、ピロティのように一見開放されている部分であっても、建築物としての利用が認められる状態にある場合には、床面積の算定対象となることがあります。

例えば、以下のようにピロティ部分に目隠しパネルを設置した場合、開放性が失われたと判断され、その部分を床面積に算入しなければならない可能性があります。
また、既存建物のピロティにこのような目隠しパネルを後から設置した場合、床面積が増加することになり、増築確認申請が必要となる可能性があります。
本来、増築確認申請が必要であるにもかかわらず申請を行っていない場合は、手続違反となり、違反建築物と判断されるおそれがあるため注意が必要です。

さらに、以下のようにピロティ部分を駐輪場として利用している場合についても、屋内的用途に供していると判断され、床面積に算入が必要となる可能性があります。
最近では、LUUPのようなシェアサイクルのポートを見かける機会も増えていますが、ピロティ部分に設置する場合は、建築基準法上問題となるケースがあります。
そのため、設置を検討する際は、事前に管轄の建築指導課等へ確認することが望ましいでしょう。

床面積の算定等に関する取扱いは、以下の書籍で詳しく解説されています。
また、ピロティの取扱いに関して、国交省から事務連絡が発出されているので、以下も併せてご確認ください。
「ピロティに係る建築基準法上の床面積の取扱いについて(令和5年3月13日 事務連絡)」
guideline0003.pdfhttps://www.mlit.go.jp/toshi/walkable/pdf/guideline0003.pdf
意匠上のピロティと構造上のピロティについて
ピロティは、単に見た目や用途だけでなく、構造上の観点から区別されることもあります。
たとえば、鉄筋コンクリート造の建築物では、上階に耐震壁がある一方で、下階には十分な耐震要素がない場合、構造上「ピロティ」として扱われることがあります。
このような建物では、階ごとの剛性バランスが悪くなり、地震時に下階へ変形や応力が集中しやすくなるため、構造安全上の特別な配慮が必要となります。
例えば、以下の図のように、2階には耐震壁があるが、1階にはない場合、1階が相対的に弱い層となります。
その結果、地震時には1階部分に大きな負担がかかり、倒壊の危険性が高まります。

一方で、以下のように、2階の壁に耐震スリットが設けられ、その壁が雑壁として扱われる場合は、上階の剛性だけが過度に高くなることを避けることができます。
この場合は、1階と2階の剛性バランスが比較的保たれるため、見た目がピロティのようであっても、構造上はピロティに該当しないと整理されます。

構造上ピロティ形式を有する建築物は、1995年の兵庫県南部地震において、1階部分が押しつぶされるなど、甚大な被害を受けました。
こうした被害を踏まえ、その後はピロティ形式の建築物に対する構造計算の考え方や設計基準の整備が進められてきました。
ピロティの構造設計については、以下の書籍に詳しく記載されています。
構造設計者の間では、いわゆる「黄色本」として広く知られている代表的な書籍です。
構造上危険なピロティの見分け方
構造上のピロティを見分けるポイントとして、鉄筋コンクリート造のマンションなどで、1階部分が駐車場になっており、壁が極端に少ない建物は、構造上ピロティ形式となっている可能性があります。 東京都も、ピロティ階等を「1階部分を駐車場などに活用し、壁の量が少ない階」と説明しています。
東京都の「命を守るためのピロティ階等緊急対策事業」に関する資料には、熊本地震で生じたピロティ被害の写真が掲載されています。 こうした資料を見ると、壁の少ない1階部分が大きな被害を受けるおそれがあることが分かります。
また、右のグラフからも、阪神・淡路大震災ではピロティ建物の倒壊割合が高かったことが読み取れます。 そのため、1階が駐車場などで大きく開放されている建物では、見た目だけでなく構造上の安全性にも注意が必要です。

出典:https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/wp-content/uploads/2026/04/R8-pilotis-boshuuyoukou.pdf
一方で、構造上ピロティ形式に該当する建築物であっても、比較的新しい建物については、過去の地震被害を踏まえて構造設計上の考え方や基準の整備が進められてきました。 特に、兵庫県南部地震後には基準の見直しや技術的整理が進み、現在の技術基準解説書でもピロティ形式の建築物に関する考え方が整理されています。
そのため、2000年代以降に建てられた比較的新しい建物については、ピロティに対する安全性が十分に検討されている可能性が高く、一般に古い建物と比べると危険性は低いと考えられます。 もっとも、実際の安全性は建築時期だけで一律に決まるものではなく、構造計画や設計内容によって異なるため、個別の確認は必要です。