建築 建築基準法(構造) 法改正情報

緩勾配屋根の積雪荷重の割り増しについて【平成31年1月15日施行】

・特定緩勾配屋根とは?
・どのような場合に適用される?
・どのように計算する?

一級建築士が解説します。

特定緩勾配屋根とは

平成26年2月に関東甲信地方を中心として発生した大雪では、その直後に雨が降ったことにより、積雪に想定以上の水分が含まれ、屋根に大きな荷重がかかりました。
その結果、体育館などの勾配が緩く、大スパンの屋根で、崩落等の被害が発生しました。

こうした被害を踏まえ、一定規模以上の緩勾配屋根については、積雪後に雨が降ることによる荷重の増加も考慮するよう、積雪荷重に関する建築基準法の取扱いが平成31年1月15日に改正されました。
具体的には、構造計算において用いる積雪荷重に、積雪後の降雨を考慮した割増係数を乗じます。

対象となる緩勾配屋根

対象となる特定緩勾配屋根については、国土交通省により、次のすべてに該当する建築物とされています。

  • 多雪区域以外の区域にある建築物であること
    ただし、垂直積雪量が15cm以上の区域に限られます。
  • 次の条件を満たす屋根を有する建築物であること
    • 大スパン屋根であること
      (棟から軒までの長さが10m以上)
    • 緩勾配屋根であること
      (屋根勾配が15度以下)
    • 屋根重量が軽いこと
      (屋根版が鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造でないもの)

つまり、雪がある程度積もる地域にある、軽い大スパンの緩勾配屋根が対象になるということです。

技術的助言

当該告示の改正にあたっては、国土交通省から技術的助言が発出されていますので、以下に掲載します。
この技術的助言では、屋根の形状に応じた L の数値や、屋根勾配の考え方が示されているため、内容をよく確認しておくことが重要です。

割増係数について

対象となる緩勾配屋根については、規定の積雪荷重に、以下の表1の α を乗じた荷重に対して、安全性の検討が必要です。
当該規定は、平成19年国土交通省告示第594号第2第三号ホにて規定されています。

おすすめ法令集です。

dr の直線補間について

上記表2を読むだけだと、dr の数値の算出方法が分かりにくいと思うので、グラフにしました。
例えば、屋根勾配=2度、屋根水平投影長さL=50mの場合、グラフから dr=0.14 と導きだせます。


では、屋根水平投影長さ L が10mから50mの間にある場合は、どのように dr を求めればよいのでしょうか。
この場合も、グラフを用いることで、おおよその数値を求めることができます。
例えば、屋根勾配が10度、屋根水平投影長さ L が30mの場合を考えます。
L=30m は、10mと50mのちょうど中間に当たるため、屋根勾配10度の位置で線を引き、10mに対応する線(青)と50mに対応する線(オレンジ)のちょうど中間の位置にある点を読むことで、おおよその dr の値を求めることができます。

この場合は、dr=0.05 くらいだとわかりますね。

計算式やこのグラフ等からは、以下のことが読み取れます。
・dr の値が小さいほど割増係数α も小さくなる
・屋根水平投影長さが短いほど dr は小さくなる
・屋根勾配が急であるほど dr は小さくなる

屋根形状係数 μb について

屋根の上に積もった雪は、外気温が低く、屋根ふき材の表面と雪の下面が凍結している場合には、屋根から滑り落ちにくくなります。
一方で、雪止めがなく、雪の下面が凍結していない場合には、雪が屋根から滑り落ちることがあります。

このような屋根上の積雪の滑落によって、屋根に残る雪の量が減ることを考慮したものが、屋根形状係数です。

以下の計算式によって算出します。

屋根勾配と屋根形状係数の関係をグラフにすると以下のようになります。
β=15度の場合、μb=0.961 となります。

計算式やグラフからは、以下のことが読み取れます。
・μb の値が大きいほど割増係数 α は小さくなる。
・屋根勾配が緩いほど、μb は大きくなる。

垂直積雪量 d について

垂直積雪量は、各地方によって異なる数値で、各地方ごとに特定行政庁によって定められます。

複雑なので、ここでは割愛します。


既存不適格増築する場合

既存建築物にEXP.Jで別棟増築を行う場合、原則として構造規定は既存建築物にはかかりません。
しかし、一定の場合を除いて積雪荷重の割増については既存建築物にも考慮が必要となるため注意が必要です。
この点は、先ほど紹介した技術的助言にも記載されていますので、あわせて確認しておきましょう。

おすすめ書籍

積雪荷重に関して、おすすめ書籍を以下に貼付けします。
高価ですが、構造に携わる方にとっての必携図書です。

  • この記事を書いた人

TAK

新卒で確認検査機関に入社し、意匠・構造の双方の確認審査業務を経験した元確認検査員。 建築基準法をはじめ、建築物に関するお役立ち情報を発信します。 【保有資格】 一級建築士/一級建築基準適合判定資格者/特定建築基準適合判定資格者(ルート2主事)/ 宅地建物取引士/住宅性能評価員/省エネ適合性判定員 ほか

-建築, 建築基準法(構造), 法改正情報