一級建築士が解説します。
液状化とは
液状化とは、地震によって地盤が強い揺れを受けたときに、地盤を構成している砂粒子同士のかみ合わせが崩れ、地盤全体が液体のような状態になる現象です。
通常時の地盤は、土の粒子同士が接触し、互いに支え合うことで建物や道路を支えています。
しかし、地下水を多く含んだゆるい砂地盤が地震の揺れを受けると、土粒子の間にある水の圧力が高まり、砂粒子同士の接触が弱くなります。
その結果、地盤が一時的に強度を失い、泥水のような状態になります。
液状化が起こると、地面から水や砂が噴き出したり、地盤が急にやわらかくなったりします。
その結果、建物が沈んだり傾いたりするほか、マンホールや地中の配管が浮き上がることもあります。さらに、地盤全体が低い方向へ流れるように動く場合もあります。

出典:国土交通省
液状化が起こりやすい地盤
液状化は、どのような地盤でも同じように発生するわけではありません。
一般的には、次のような条件がそろうと液状化が起こりやすくなります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ゆるい砂地盤 | 砂粒子が締め固まっておらず、比較的ゆるく堆積している地盤 |
| 地下水位が高い | 砂粒子のすき間が水で満たされている状態 |
| 強い地震動 | 地震により地盤が繰り返し揺すられること |
| 埋立地・旧河道等 | 人工的に造成された土地や、もともと水辺だった土地 |
特に、埋立地、干拓地、河川沿いの低地、旧河道、砂州、砂丘の間の低地などは、地下水位が高く、ゆるい砂質地盤が分布していることがあるため、液状化リスクが高い場所として注意が必要です。
建築物の構造関係技術基準解説書、いわゆる黄色本では、液状化のおそれのある地盤について、以下のように整理されています。
- 地表面から20m以内の深さにあること
- 砂質土で粒径が比較的均一な中粒砂等からなること
- 地下水で飽和していること
- N値が概ね15以下であること
また、建築基礎構造設計指針2019年版では、液状化判定を行う対象について、より詳しく整理されています。
同指針では、液状化判定を行う必要がある飽和土層は、一般に地表面から20m程度以浅の土層とされており、対象となる土は、細粒分含有率が35%以下の土とされています。
ただし、埋立地盤等の造成地盤が地表面から20m程度より深い位置まで連続している場合には、造成地盤の下端まで液状化判定を行う必要があるとされています。
また、埋立地盤等では、細粒分含有率が35%を超える低塑性シルトや、液性限界に近い含水比を持つシルトが液状化した事例も報告されています。そのため、粘土分含有率が10%以下、又は塑性指数が15%以下の埋立地盤・盛土地盤についても、液状化の検討を行う必要があります。
さらに、20m以深については、一般的な液状化危険度予測の精度が低下するため、地盤応答解析を用いることが推奨されています。
そのほか、細粒分を含む礫や、透水性の低い土層に囲まれた礫、洪積層であってもN値が小さい土層については、液状化の可能性を否定できないため、必要に応じて液状化の検討を行うことが求められます。
なお、上記は「液状化判定を行う必要がある地盤」の目安であり、直ちに「液状化のおそれがある地盤」と判断されるものではありません。実際に液状化のおそれがあるかどうかは、以降で解説する液状化判定の結果を踏まえて判断します。
液状化の判定基準|FL値とPL値
液状化のおそれがある地盤に該当する場合、地盤調査結果をもとに液状化判定を行います。
液状化判定では、主にFL値とPL値という指標が用いられます。
FL値は、各深さの土層ごとに液状化のしやすさを判定するための指標です。
一方、PL値は、地盤全体として液状化の危険度を評価するための指標です。
つまり、FL値は「その深さの土層が液状化しやすいか」を見るもの、PL値は「敷地全体として液状化の影響がどの程度あるか」を見るものと考えると分かりやすいです。
FL値とは
FL値とは、液状化抵抗率とも呼ばれ、液状化に対する抵抗率を表す指標です。
一般的には、地盤が液状化に抵抗する力と、地震時に地盤へ作用する力との関係から算出されます。
簡単にいうと、以下のような考え方です。
| FL値 | 判定の考え方 |
|---|---|
| FL値 > 1.0 | 液状化しにくいと判断される |
| FL値 ≦ 1.0 | 液状化する可能性があると判断される |
FL値が1.0を下回る場合、その土層は地震時に液状化する可能性があると判定されます。
また、FL値が小さいほど、液状化に対する余裕が小さい、つまり液状化の可能性が高いと考えられます。
ただし、FL値はあくまで深さごとの土層を評価する指標です。
そのため、ある深さでFL値が1.0以下になったとしても、それだけで敷地全体の被害程度を直接判断するものではありません。
PL値とは
PL値とは、液状化指数とも呼ばれ、地盤全体として液状化の危険度を評価するための指標です。
FL値が各深さの土層ごとの液状化のしやすさを示すのに対し、PL値は、FL値の分布を深さ方向に考慮して算出されます。
つまり、FL値は「どの深さの土層が液状化しやすいか」を見る指標であり、PL値は「敷地全体として液状化の危険度がどの程度あるか」を見る指標といえます。
PL値と液状化危険度の関係は、一般的に以下のように整理されます。
| PL値 | 液状化危険度 |
|---|---|
| PL=0 | かなり低い。 |
| 0<PL≦5 | 低い。 |
| 5<PL≦15 | 高い。 |
| PL>15 | 極めて高い。 |
なお、PL値を算出するためには、各深さのFL値を求める必要があります。そのため、ボーリング調査や粒度試験などにより、土質、N値、地下水位、細粒分含有率などを把握することが前提となります。
ただし、PL値はあくまで地盤全体の液状化危険度を評価するための指標であり、建物被害の有無を直接示すものではありません。実際の被害は、建物の規模、基礎形式、液状化層の深さや厚さ、地盤改良の有無、周辺地盤の状況などによって変わります。
FL値とPL値の違い
FL値とPL値の違いを整理すると、以下のようになります。
| 指標 | 見ているもの | 主な使い方 |
|---|---|---|
| FL値 | 各深さの土層ごとの液状化しやすさ | どの層が液状化する可能性があるかを確認する |
| PL値 | 地盤全体の液状化危険度 | 敷地全体として液状化の影響がどの程度ありそうかを確認する |
たとえば、ある地盤で一部の深さにFL値1.0以下の層があったとしても、その層が深い位置にある場合と、地表近くに連続して存在する場合とでは、地表面や建物への影響は異なります。
そのため、液状化判定では、FL値だけでなく、PL値や地層構成、地下水位、建物条件をあわせて確認することが重要です。
液状化判定の基本的な流れ
液状化判定は、一般的に以下のような流れで行われます。
- ボーリング調査等により、土質、N値、地下水位を確認する
- 液状化判定の対象となる土層を抽出する
- 各深さについて、地震時に作用する力と液状化に抵抗する力を計算する
- 各土層のFL値を算出する
- FL値の分布をもとにPL値を算出する
- 判定結果を踏まえ、地盤改良や杭基礎などの対策要否を検討する
FL値は「液状化に対する抵抗率」、PL値は「敷地全体の危険度を読む指標」として整理されており、液状化判定の結果を地盤改良や基礎設計に反映することが重要とされています。
地表面加速度の設定|200galを用いることが多い
液状化判定を行う際は、地盤条件だけでなく、どの程度の地震動を想定するかも重要です。
液状化判定では、地震時に地盤へ作用するせん断応力を評価するために、地表面加速度を設定します。
この地表面加速度をどの程度に設定するかによって、FL値やPL値の結果が変わります。
実務上、中地震時の液状化判定では、地表面加速度として150〜200gal程度を用いることが多く、特に200galを採用するケースが一般的です。
200galは、200cm/s²を意味します。
galは加速度の単位で、1gal=1cm/s²です。
また、建築基礎構造設計指針でも、中地震程度の地震動条件として、地表面最大加速度200gal、マグニチュード7.5を標準とする旨が示されています。
200galは「中地震程度」の目安
200galは、一般に中地震程度の地震動を想定した液状化判定で用いられることが多い値です。
構造設計の実務では、動的解析など詳細な地盤応答解析を行わない場合、中地震時には150〜200gal程度、大地震時には350gal程度を採用する考え方があります。
ただし、これはあくまで一般的な目安です。
実際に採用する地表面加速度は、建物用途、設計方針、地盤条件、行政・審査機関の取扱い、適用する指針や基準によって異なります。
地表面加速度の設定で判定結果は変わる
液状化判定では、地表面加速度を大きく設定するほど、地震時に地盤へ作用する力が大きく評価されます。
そのため、同じ地盤であっても、150galで判定した場合と、200galや350galで判定した場合では、FL値やPL値の結果が変わることがあります。
たとえば、150galではFL値が1.0を上回っていても、200galや350galで判定するとFL値が1.0以下となり、液状化の可能性があると判定される場合があります。
そのため、液状化判定の結果を見るときは、単にFL値やPL値だけを見るのではなく、どの地表面加速度を用いて判定しているかを確認することが重要です。
液状化対策
液状化のおそれがある地盤では、建物の沈下や傾斜、地盤の変形、埋設管の浮き上がりなどを防ぐため、計画段階で適切な対策を検討することが重要です。
液状化対策は、大きく分けると、地盤自体を液状化しにくくする方法と、液状化が発生しても建物への影響を小さくする方法があります。
地盤を締め固める方法
液状化は、ゆるい砂地盤で発生しやすいため、地盤を締め固めて密度を高めることで、液状化しにくい状態にする方法があります。
代表的なものとして、サンドコンパクションパイル工法などがあります。
地盤中に砂杭などを造成し、周囲の地盤を締め固めることで、地震時に砂粒子のかみ合わせが失われにくくなります。
地盤を固化する方法
地盤にセメント系固化材などを混合し、地盤そのものを固める方法です。
液状化しやすい砂質地盤を固化することで、地震時の支持力低下や沈下を抑える効果が期待できます。
戸建住宅や小規模建築物では、柱状改良や表層改良などが検討されることもあります。
地下水位を下げる方法
液状化は、地下水で飽和した砂地盤で発生しやすいため、地下水位を下げることも対策の一つです。
排水設備などにより地盤中の水を抜き、間隙水圧の上昇を抑えることで、液状化の発生を抑制します。
ただし、地下水位低下による周辺地盤への影響や、長期的な維持管理が必要になる点には注意が必要です。
杭基礎により支持層へ伝達する方法
液状化層の下に良好な支持層がある場合は、杭基礎により建物荷重を支持層へ伝える方法があります。
この場合、液状化層が地震時に支持力を失っても、杭を通じて建物を支持することができます。
ただし、液状化に伴う地盤の沈下や側方流動により杭に大きな力が作用する場合があるため、杭の設計では液状化時の影響も考慮する必要があります。
建物の沈下・傾斜を抑える方法
小規模建築物では、基礎の剛性を高めることで、不同沈下や傾斜を抑える考え方もあります。
例えば、べた基礎を採用することで建物荷重を広く分散させたり、基礎梁の剛性を高めたりする方法があります。
ただし、基礎を強くするだけで液状化そのものを防げるわけではないため、地盤条件に応じた検討が必要です。
ライフライン・外構への対策
液状化では、建物本体だけでなく、配管、桝、マンホール、外構などにも被害が生じます。
そのため、建物の基礎だけでなく、給排水管やガス管の接続部に可とう性を持たせる、埋設管の浮き上がりを防止する、外構の沈下に配慮するなどの対策も重要です。
液状化対策を検討する際の注意点
液状化対策は、すべての敷地で同じ方法を採用すればよいわけではありません。
地盤条件、地下水位、液状化層の深さ、建物規模、基礎形式、周辺環境、施工性、コストなどによって、適切な対策は異なります。
そのため、液状化判定の結果を踏まえたうえで、地盤調査会社、構造設計者、施工者等と協議し、計画に適した対策を選定することが重要です。
液状化の危険性がある地盤の調べ方
液状化リスクを確認する際は、まず自治体が公開している液状化予測図や、国土地理院の地形分類図を確認するとよいです。
ただし、これらの資料はあくまで広域的なリスクを把握するためのものであり、個別敷地の液状化の有無を確定するものではありません。実際に建築計画を進める場合は、ボーリング調査や土質試験などを行い、液状化判定を行う必要があります。
自治体の液状化予測図を確認する
液状化リスクを調べる方法として、自治体が公開している液状化予測図があります。
たとえば東京都では、「東京の液状化予測図」が公開されており、地域ごとの液状化の可能性を確認することができます。
ただし、東京都の液状化予測図は、東京都全域の地下を一律の強さで揺らした場合の液状化の可能性を相対的に示したものであり、首都圏直下地震など特定の地震に対する液状化の可能性を示すものではありません。
また、液状化判定は250m四方のメッシュ単位で行われているため、同じメッシュ内でも場所によって液状化の可能性が異なる場合があります。
そのため、液状化予測図は、敷地周辺の大まかな傾向を把握するための資料として活用し、個別敷地の判断は詳細な地盤調査により確認することが重要です。
国土地理院の地図で土地の成り立ちを確認する
液状化リスクを把握するうえでは、その土地がどのように形成されたかを確認することも重要です。
国土地理院の地理院地図では、土地条件図や治水地形分類図などを確認できます。土地条件図は、防災対策や土地利用等に必要な自然条件の基礎資料として、山地、台地・段丘、低地、水部、人工地形などの地形分類を示したものです。
また、治水地形分類図では、扇状地、自然堤防、旧河道、後背湿地、盛土地・埋立地などの地形分類を確認できます。国土地理院の解説でも、治水地形分類図では、旧河道や後背湿地など、土地の液状化と関連が深いと考えられる区域を確認できるとされています。
特に、次のような地形は液状化リスクを確認する際の注意ポイントになります。
| 確認したい地形 | 注意点 |
|---|---|
| 埋立地・盛土地 | ゆるい砂質土や人工的な造成地盤が分布している可能性がある |
| 旧河道 | 過去に川だった場所で、砂質土や地下水位の高い地盤が存在する可能性がある |
| 後背湿地 | 軟弱地盤や地下水位の高い地盤が分布する可能性がある |
| 旧水部 | かつて海、湖沼、池、河川等だった場所で、埋土・盛土により造成されている可能性がある |
| 砂丘間低地・砂州間低地 | 砂質地盤と地下水条件により液状化リスクが生じる場合がある |
地図だけで判断せず、地盤調査で確認する
液状化予測図や地形分類図は、液状化リスクを把握するうえで有用ですが、これだけで個別敷地の安全性を判断することはできません。
同じ地域や同じメッシュ内でも、地盤の状態は場所によって異なります。
また、過去の地形や土地利用から液状化しやすそうに見える場所であっても、実際には地盤改良が行われている場合や、支持層まで杭基礎で支持されている場合もあります。
そのため、建築計画や不動産調査で液状化リスクを確認する場合は、次の流れで確認するのが実務的です。
- 自治体の液状化予測図を確認する
- 国土地理院の土地条件図・治水地形分類図で土地の成り立ちを確認する
- 旧版地形図や航空写真で、過去の河道・池・湿地・埋立の履歴を確認する
- ボーリング柱状図、N値、地下水位、土質を確認する
- 必要に応じてFL値・PL値による液状化判定を行う
- 判定結果を踏まえて、基礎形式や地盤改良などの対策を検討する
液状化リスクは、地形、土質、地下水位、地震動、建物規模、基礎形式によって変わります。
そのため、地図情報はあくまで一次確認として活用し、最終的には地盤調査と専門的な判定によって判断することが重要です。