宅配ボックスの容積率緩和について
近年、共同住宅やオフィス、商業施設などで宅配ボックスの設置が増えています。
宅配ボックスは、居住者や利用者が不在の場合でも荷物を受け取ることができるため、利便性が高く、再配達の削減にもつながる設備です。
一方で、建築基準法上は、宅配ボックスを建物内に設ける場合、用途が発生するとして、その設置部分の床面積は通常、容積率に算入する必要がありました。
この点について、現在は一定の要件を満たす宅配ボックス設置部分について、容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しないという緩和措置が設けられています。
以下の平成30年9月21日付の技術的助言にて明確化されました。
容積率緩和の対象となる宅配ボックスとは
容積率緩和の対象となる宅配ボックスとは、配達された物品を一時的に保管するための荷受箱をいいます。
国土交通省の技術的助言では、宅配ボックスについて、配達された物品の一時保管を目的に設置される設備と整理されています。
そのため、単に物品を保管するためのロッカーやトランクルームは、この緩和の対象にはなりません。
また、壁や床等に定着していないものについても、対象外とされています。
つまり、容積率緩和を受けるためには、単に「荷物を入れられる箱」であればよいわけではなく、配達物の一時保管を目的とした宅配ボックスであることが必要です。
電気式・ダイヤル式の違いは問われない
宅配ボックスには、ダイヤル錠式のものや、外部電源を利用する電気式のものなど、さまざまな種類があります。
この点について、国土交通省の技術的助言では、外部電源を利用しないダイヤル錠等によるもの、外部電源を利用して施錠するものの区分は問わないとされています。
そのため、容積率緩和の対象となるかどうかは、電気式か機械式かではなく、配達された物品の一時保管という宅配ボックス本来の用途に供されるかで判断されます。
住宅以外の建築物でも対象になる
宅配ボックスというと、共同住宅に設置されるイメージが強いかもしれません。
しかし、現在の緩和措置は、共同住宅に限られるものではありません。
国土交通省の技術的助言では、住宅に設置されるもの、事務所に設置されるもの、商業施設等に設置されるものの区分は問わないとされています。
平成30年の建築基準法改正に伴う法改正でも、宅配ボックスについて、オフィスや商業施設など多様な用途の建築物に設置しやすくするため、建物用途や設置場所によらず、一定範囲内で容積率規制の対象外とすることが示されています。(国土交通省)
郵便受けやAED保管庫を含んでもよい
宅配ボックスは、単独で設置される場合もありますが、実際には郵便受けと一体になっている製品も多くあります。
国土交通省の技術的助言では、宅配ボックスには、配達物の一時保管機能に必要となる電子操作盤等のほか、構造上一体的に設けられた郵便受けや、付加的に設けられるAED保管庫等を含んでいても差し支えないとされています。
宅配ボックス設置部分の範囲
宅配ボックスの容積率緩和では、どこまでを宅配ボックス設置部分として扱うかが重要です。
国土交通省の技術的助言では、宅配ボックス設置部分には、以下の部分が含まれるとされています。
- 宅配ボックスの利用のために設ける室その他これに類する区画
- その区画内に設ける郵便受け
- 配達された物品の預け入れ又は取り出しの用に供する部分
また、預け入れ又は取り出しに使う部分の境界が壁等で明確でない場合は、宅配ボックスの預け入れ又は取り出し面から前方に水平距離1mまでの部分を含むものとされています。
つまり、宅配ボックス本体の面積だけでなく、荷物の出し入れに必要なスペースも、一定範囲で宅配ボックス設置部分として扱うことができます。

出典:国土交通省
容積率不算入となる上限
宅配ボックス設置部分は、一定の範囲内で容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しないことができます。
建築基準法施行令では、宅配ボックスを設ける部分について、建築物の各階の床面積の合計の100分の1を限度として、容積率算定上の延べ面積に算入しない旨が定められています。(e-Gov 法令検索)
たとえば、延べ面積が2,000㎡の建築物であれば、宅配ボックス設置部分について、最大20㎡まで容積率算定上の延べ面積から除外できる可能性があります。
ただし、これはあくまで容積率算定上の取扱いです。
建築基準法上の床面積そのものから消えるわけではないため、確認申請書や面積表では、容積率対象面積と床面積の整理を分けて考える必要があります。
共同住宅の共用廊下に設置する場合
共同住宅の共用廊下に宅配ボックスを設置する場合は、平成29年にも運用の明確化が行われていました。
国土交通省の平成29年11月10日付け技術的助言では、宅配ボックス等設置部分であって、共同住宅の共用廊下と扉等で区画されておらず、当該廊下から直接出入りして利用される場合は、共同住宅の共用廊下の用に供する部分として、容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しないものと扱って差し支えないとされています。
これは、共同住宅の共用廊下部分が、建築基準法第52条第6項により、容積率算定上の延べ面積に算入されないことを踏まえた取扱いです。
ただし、共用廊下と扉等で区画されている場合や、共用廊下から直接利用できない場合は、この取扱いに該当しない可能性があります。
老人ホーム等の共用廊下に設置する場合
平成30年改正では、老人ホーム等の共用廊下についても、共同住宅の共用廊下と同様に、容積率算定上の延べ面積に算入しない取扱いが整理されました。
そのため、老人ホーム等の共用廊下に設置する宅配ボックス等についても、共同住宅の共用廊下に設置する場合と同様に、容積率算定上の延べ面積に算入しないものとして扱って差し支えないとされています。
用途転用には注意が必要
宅配ボックス設置部分は、配達物の一時保管のために容積率緩和を受けるものです。
そのため、設置後に宅配ボックスを撤去し、別の用途に転用するような場合は、法不適合となるおそれがあります。
国土交通省の技術的助言でも、宅配ボックスの撤去等を含む建築後の用途転用による法不適合を防止するため、特定行政庁が必要に応じて報告徴収や立入検査等により実態把握を行うことが示されています。
つまり、容積率緩和を受けて設置した部分を、後から倉庫、管理室、物品保管スペースなどに転用することで、結果的に建築基準法違反になる可能性があるため、注意が必要です。
確認申請書への記載にも注意
宅配ボックス設置部分については、平成30年に建築確認申請書の記載事項として追加されています。
規則改正により、宅配ボックス設置部分の床面積を建築確認申請書の記載事項として加えられています。
したがって、宅配ボックス設置部分の容積率緩和を適用する場合は、設計図書や面積表において、
- 宅配ボックス設置部分の床面積
- 容積率算定上不算入とする面積
- 不算入限度との関係
- 預け入れ・取り出しに必要なスペースの範囲
を明確に整理する必要があります。
実務上の注意点
宅配ボックスの容積率緩和を適用する場合は、次の点に注意が必要です。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 宅配ボックスの目的 | 配達物の一時保管を目的としているか |
| 対象外の設備 | 単なるロッカー、トランクルーム、物品保管庫になっていないか |
| 建物用途 | 共同住宅以外でも対象となるが、用途ごとの動線を整理する |
| 設置部分の範囲 | 本体だけでなく、預け入れ・取り出し部分も含めて整理する |
| 1m範囲 | 区画が明確でない場合、預け入れ・取り出し面から前方1mまでを対象とする |
| 不算入限度 | 各階の床面積の合計の100分の1以内か |
| 用途転用 | 宅配ボックス撤去後に倉庫等へ転用しない |
| 申請書記載 | 確認申請書・面積表に宅配ボックス設置部分を明記する |
建築基準法の記載部分
建築基準法施行令第2条第1項第四号
延べ面積 建築物の各階の床面積の合計による。ただし、法第52条第1項に規定する延べ面積(建築物の容積率の最低限度に関する規制に係る当該容積率の算定の基礎となる延べ面積を除く。)には、次に掲げる建築物の部分の床面積を算入しない。
ヘ 宅配ボックス(配達された物品(荷受人が不在その他の事由により受け取ることができないものに限る。)の一時保管のための荷受箱をいう。)を設ける部分(第3項第六号及び第137条の8において「宅配ボックス設置部分」という。)
令第2条第3項
第1項第四号ただし書の規定は、次の各号に掲げる建築物の部分の区分に応じ、当該敷地内の建築物の各階の床面積の合計(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、それらの建築物の各階の床面積の合計の和)に当該各号に定める割合を乗じて得た面積を限度として適用するものとする。
一 自動車車庫等部分 5分の1
二 備蓄倉庫部分 50分の1
三 蓄電池設置部分 50分の1
四 自家発電設備設置部分 100分の1
五 貯水槽設置部分 100分の1
六 宅配ボックス設置部分 100分の1
まとめ
- 平成29年11月10日の技術的助言により、共同住宅の共用廊下の一部に宅配ボックスが設置された場合、共用廊下の面積に算入してもよいこととなった。
- 平成30年9月21日の技術的助言により、建物用途を問わず、宅配ボックスの容積率緩和について、明確化された。
- 対象となる宅配ボックスは、配達された物品を一時保管するための荷受箱であり、単なるロッカーやトランクルームは対象外。
- 電気式、ダイヤル錠式などの施錠方式は問われない。
- 宅配ボックスには、必要な電子操作盤、構造上一体の郵便受け、付加的なAED保管庫等を含めてもよい。
- 宅配ボックス設置部分には、本体だけでなく、配達物の預け入れ又は取り出しに必要な部分も含まれる。
- 境界が壁等で明確でない場合は、預け入れ又は取り出し面から前方1mまでが対象範囲となる。
- 容積率不算入の上限は、建築物の各階の床面積の合計の100分の1まで。
- 容積率緩和を受けた宅配ボックス設置部分を、後から倉庫等に用途転用すると法不適合となるおそれがある。
- 実際の計画では、確認申請書や面積表で不算入面積を明確に整理し、必要に応じて特定行政庁や指定確認検査機関へ確認することが重要である。