・行政との違いは?
・転職したいけどどう?
指定確認検査機関で審査を担当していた筆者が解説します。
指定確認検査機関について
指定確認検査機関とは、建築基準法に基づき、建築確認における確認審査・現場検査等を行う機関として国土交通大臣、地方整備局又は都道府県知事から指定された民間企業です。
指定確認検査機関が誕生したきっかけは、平成7年に発生した阪神・淡路大震災でした。
当時、確認検査業務はその土地を管轄する行政庁でのみ行われていました。建てる建物に対して、それを審査・検査する人員が圧倒的に不足しており、確認申請を行わずに建物を建てるケースが後を絶ちませんでした。
多くの建物が倒壊し、尊い命が奪われたことを教訓として、平成10年に建築基準法が改正され、それまで特定行政庁の建築主事が行ってきた確認検査について、民間企業も行うことができるようになりました。
現在においても、行政(特定行政庁)で確認検査の受付は行われていますが、実際はほとんどが民間の確認検査機関により審査・検査が行われています。
確認と許可の違い
よく間違えている方がいますが、確認検査における「確認」は、「許可」とは全く異なります。
許可という行為を説明すると、以下のようになります。
⇒「してはいけない」と禁止されているものに対して、個別に許可権者が「いいですよ」と認めるもの
ですので、そこには許可権者の裁量の余地があります。なので、許可権者は大きな権限を持つことになります。
対して、確認検査における「確認」は、「羈束行為」と呼ばれています。
羈束行為とは、法律に定められたルールを、審査する人間の裁量を交える余地がなく、誰が審査しても同じ判断になる行為を意味します。
確認検査という行政の業務が民間開放できたのは、確認検査が「羈束行為」であることが要因です。
羈束行為という言葉自体を覚える必要はないですが、確認と許可の違いを覚えておくと損は無いでしょう。
理論上は、どこに申請を出しても同じになるはずですが、実務においては、個々の審査担当のレベルや個性があり、全く同じ判断になるとは限りません。
ここで、とても重要なことなのですが、基本的には民間の確認検査機関には、建築基準法の運用や解釈について判断する権利がありません。
なので、民間の場合、審査の際に判断に迷う部分があれば基本的には行政に照会をかけて判断を仰ぐことになります。
行政庁には民間が行った確認行為を取り消しするなどの処分をすることができるなど、非常に大きな権限があります。
特定行政庁(建築主事)と指定確認検査機関の違い
行政と確認検査機関の違いを表にまとめました。※主観を含みます。
| 特定行政庁(建築主事) | 指定確認検査機関 | |
| 審査スピード | 遅い | 速い |
| 申請手数料 | 安い | 高い |
| 全国の物件を審査できるか | 管轄地のみ | 全国の物件どこでもOK(機関による) |
| 審査の質 | 低い(民間開放以降、審査をあまりやらないので、審査力は低下気味) | 高い(機関による) |
指定確認検査機関はどんな会社か、転職先としてどうか
私自身は新卒で確認検査機関に入社しましたが、新卒で入社する人はほとんどいません(新卒の時点でこの業種の存在をそもそも知っている人があまりいない)。
ですので、社内には建築関係の様々な方面出身の方々が在籍しています。私が在籍していた機関での話になりますが、多いのがゼネコン、ハウスメーカー、設計事務所の現場監督や設計出身の方です。
また、検査員は行政OBの方も多いです。
審査担当の年齢層としては、30代~50代が中心です。特に構造は高齢化が進んでいて、50~60代が中心です。40代でも若手といえます。
20代30代で構造を志す方はどの機関でも喉から手が出るほど欲しいと思います。
雰囲気としては、基本的に個人プレイでできる仕事なので良くも悪くも一体感が無く統率がとれていないです。
人柄は、まじめな人が多いです。
ワークライフバランスに関しては良好で、20時以降残業するようなことはあまりありませんでした。
給料については、中堅以上のゼネコンやハウスメーカー等と比べると少ないです。
部長以上のクラスでないと、年収1000万円を超えるのは難しいと思います。
結論としては、確認検査機関を転職先としておすすめできるのは以下のような人です。
・ワークライフバランスを確保したい
・収入があまり多くなくても良い
・建築基準法等に関する知識をつけたい
まとめ
個人的には、構造の人手が圧倒的に足りないので、若手で構造担当が増えることを願っています。
今回の記事は以上です。
お読みいただきありがとうございました。