・工作物って何?
・建築物との違いは?
・高さの算出方法は?
・新築する場合必要な手続きは?
指定確認検査機関で工作物の審査を担当していた一級建築士/一級建築基準適合判定資格者が解説します。
工作物とは
工作物とは、人工的に造られた構造物全般を指します。
次に建築物の定義を説明します。建築基準法第2条に「建築物」が定義されています。
建築基準法第2条第一号
建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
建築物とは、土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するものとされています。
建築物も工作物の一種ということになります。
一部の工作物については、建築基準法が準用されます。
※「準用」とは、法律の規定などをそのままではなく類似の対象や状況に対して適用することを意味します。
建築基準法第88条において、準用される条項が定義されています。
さらに、施行令第138条において準用対象となる工作物が指定されています。
まとめると以下のようになります。※法第88条第2項、施行令第138条第3項については、あまり登場しない条文なので割愛します。
基準法を一部貼付けしているので、読みにくければグレーのかっこ書きを読み飛ばして読んでください。
| 根拠条項 | 工作物の種類 | 準用する条項 |
| 法第88条第1項、施行令第138条第1項、第2項 | ・高さが6mを超える煙突(支枠及び支線がある場合においては、これらを含み、ストーブの煙突を除く。) ・高さが15mを超える鉄筋コンクリート造の柱、鉄柱、木柱その他これらに類するもの(旗ざおを除く。) ・高さが4mを超える広告塔、広告板、装飾塔、記念塔その他これらに類するもの ・高さが8mを超える高架水槽、サイロ、物見塔その他これらに類するもの ・高さが2mを超える擁壁 ≪昇降機等≫ ・乗用エレベーター又はエスカレーターで観光のためのもの(一般交通の用に供するものを除く。) ・ウォーターシュート、コースターその他これらに類する高架の遊戯施設 ・メリーゴーラウンド、観覧車、オクトパス、飛行塔その他これらに類する回転運動をする遊戯施設で原動機を使用するもの | 第3条、第6条(第3項、第5項及び第6項を除くものとし、第1項及び第4項は、昇降機等については第1項第1号から第3号までの建築物に係る部分、その他のものについては同項第4号の建築物に係る部分に限る。)、第6条の2(第3項を除く。)、第6条の4(第1項第1号及び第2号の建築物に係る部分に限る。)、第7条から第7条の4まで、第7条の5(第6条の4第1項第1号及び第2号の建築物に係る部分に限る。)、第8条から第11条まで、第12条第5項(第3号を除く。)及び第6項から第9項まで、第13条、第15条の2、第18条(第4項から第13項まで及び第24項を除く。)、第20条、第28条の2(同条各号に掲げる基準のうち政令で定めるものに係る部分に限る。)、第32条、第33条、第34条第1項、第36条(避雷設備及び昇降機に係る部分に限る。)、第37条、第38条、第40条、第3章の2(第68条の20第2項については、同項に規定する建築物以外の認証型式部材等に係る部分に限る。)、第86条の7第1項(第28条の2(第86条の7第1項の政令で定める基準に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)、第86条の7第2項(第20条に係る部分に限る。)、第86条の7第3項(第32条、第34条第1項及び第36条(昇降機に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)、前条、次条並びに第90条 ≪昇降機等限定≫ 第7条の6、第12条第1項から第4項まで、第12条の2、第12条の3及び第18条第24項 |
上記の表より、法第6条が準用されているのが分かります。
ですので、上記の工作物は建築物と同様に確認申請が必要となります。
工作物を新築する場合に必要な手続き等
確認申請の頻度が高い広告塔や擁壁について、説明します。
広告塔については、前述の表の通り、高さが4mを超える場合は確認申請を提出して確認済証・検査済証の交付を受ける必要があります。
野立ての看板や建物の屋上の看板、袖看板などについても、その高さが4mを超えた時点で申請が必要になります。
高さの算定方法は、建設地の管轄行政庁によって判断が分かれることがあるので、事前に行政庁へ確認するのがベターですが、
基本的には以下の絵のように、骨組みを含めてその下端から上端までの寸法で判断します。

下の絵のように、袖看板が何基か連なっている場合、個々の袖看板ごとに高さを算定するか、袖看板全体で算定するかは行政庁によって判断が変わるので、要注意です。

構造的に分離しているので、構造体ごとに高さを算定すれば良いと判断される場合もあれば、見た目上連なった一つの看板であれば全体の高さを基準として判断される場合もあります。要はケースバイケースです。
また、確認申請とは別に屋外広告物申請を事前に行う必要があります。
申請先は、管轄地の行政庁になります。
擁壁については、高さが2mを超える場合は確認申請を提出して確認済証・検査済証の交付を受ける必要があります。
高さの算定については、広告塔と同様に管轄の行政庁によって判断が分かれるので確認が必要となりますが、以下の絵のように、土の下端から上端までとすることが一般的です。

ただし、擁壁に関しては、確認申請が不要になるケースがあります。法第88条第4項に規定されています。
以下にまとめました。
| 法第88条第4項 ≪確認申請が不要となるケース≫ |
| ・宅地造成及び特定盛土等規制法(昭和36年法律第191号)第12条第1項、第16条第1項、第30条第1項若しくは第35条第1項 ・都市計画法第29条第1項若しくは第2項若しくは第35条の2第1項本文 ・特定都市河川浸水被害対策法(平成15年法律第77号)第57条第1項若しくは第62条第1項 ・津波防災地域づくりに関する法律(平成23年法律第123号)第73条第1項若しくは第78条第1項 ⇒上記の許可を受けなければならない擁壁については、確認申請不要。 |
この中でも特によく登場するのが、都市計画法に基づく許可を受ける場合です。これはいわゆる開発許可による擁壁のことです。
開発許可申請の中で、擁壁の構造等について審査が行われるため、開発許可を伴う擁壁の新築については、擁壁の確認申請は不要となります。
まとめ
・工作物とは、人工的に造られた構造物
・一部の工作物は建築基準法が準用される。
・高さによっては確認申請が必要(高さの算定方法は行政庁によって判断が異なる)。
以上です。
記事をお読みいただき、ありがとうございました。